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光と影が交錯する炭鉱遺産

長崎県南部の東シナ海に浮かぶ高島、中ノ島、端島(軍艦島)の3島は、かつて炭鉱で栄え、日本の発展を根底から支えた島々です。同時に戦争の時代を駆け抜けた島々でもあり、そこにはコントラストの強い近代の光と影が交錯する物語が眠っています。

高島と端島は、2015年に世界文化遺産に登録されました。中ノ島は世界遺産にこそ登録されていませんが、島内に残る明治時代の炭鉱施設は、世界遺産に匹敵する貴重な遺産といえます。

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高島炭鉱近代の夜明けと過酷な労働

高島炭鉱 WORLD HERITAGE

長崎でもっとも早く石炭が発見されたのが高島。死の商人と呼ばれたトーマス・ブレーク・グラバーと蘭癖大名の異名を持つ鍋島直正によって、明治元年に開発された北渓井坑(ほっけいせいこう)は、国内初の蒸気機関を用いた炭鉱施設で、日本の産業革命はここから始まりました。

しかし初期の開発期には納屋制度という搾取労働が各地の炭鉱で横行していました。高島では国内で初めて納屋制度が廃止されましたが、戦後まで過酷な労働環境は続きました。また戦後は、二子竪坑をはじめ東洋一の炭鉱として高度経済成長を支えましたが、国の石炭政策に翻弄され、大赤字で閉山。いち企業の経営で、国内で2番目に長い操業期間を誇りました。

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中ノ島炭鉱幻の軍艦島

中ノ島炭鉱 TREASURE ISLAND

三菱が、高島の次に開発した炭鉱の島です。石積みで築堤し、人工地盤にさまざまな炭鉱施設や住宅を建設しました。いわば軍艦島の試作品ともいえる島でしたが、わずか十数年で閉山。その後100年以上放置された姿は未来の軍艦島ともいえます。

竪坑跡や蒟蒻煉瓦など島内に残る操業時の炭鉱施設は、黎明期の炭鉱の姿を今に伝える貴重な遺産であると同時に、中ノ島が軍艦島の火葬場だったことを示す火葬炉も残っています。

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端島炭鉱(軍艦島)早すぎた未来都市

端島炭鉱(軍艦島) WORLD HERITAGE

国内最高品質の石炭が採掘できることから、本来は人が住まない狭小の島を改造した半人工の島です。国内初のRCアパートの建設をはじめ、国内初の屋上農園や国内初の海底水道、そして大正時代からすべてのライフラインが外部供給だった端島は、早すぎた未来都市でした。

同時に、大日本帝国憲法が施行された年に三菱が経営を始め、ベトナム戦争で米軍が撤退した翌年に閉山した端島は、いわば近代戦争と共に発展した炭鉱でもありました。